オリヅルスミレ
1982年沖縄北部の辺野喜川(べのきがわ)中流域沿いで中学校教諭の比嘉清文氏により発見されました。たった2株だけという事で注目され、1998年当時琉球大学理学部助教授の横田昌嗣氏により新種として発表されました。その後、沖縄の熱帯・亜熱帯都市緑化植物園で増殖、広島市植物公園では組織培養で増殖、日本植物園協会の植物多様性保全拠点園で危険分散もあり各園で栽培が始まりました。栽培して分かったのが、沖縄産であるが暑さに弱いこと。意外と夏は涼しく、冬は寒くなくと贅沢な環境を好むことが分かり、当館では年中空調の効いた18℃の温室で栽培しています。この草丈数センチの小さなスミレ、1994年に約30株が新たなる自生地で見つかりました。ただ、無毛で形態がやや異なり変種扱いになるのか、現在テリハオリヅルスミレの名で知られています。「折鶴」の名前は、オリヅルスミレが日本のスミレでは珍しくイチゴが匍匐枝で増殖するようにクローンでも殖えるのですが、その匍匐枝(ストロンstolon, ランナーrunners)を上向きに伸ばし、子株がぶら下がる様からきています。学名のストロニフロラは匍匐枝のある花の意味です。匍匐枝をもつスミレはオーストラリアでツルスミレ(Viola hederacea)、そしてインドネシアジャワ島パングランゴ山の3000m付近でビオラ・ピロサ(V.pilosa)を観察しましたが、匍匐枝でのいわゆるクローンでの増殖以外に本来の種子による増殖もあり安心しました。DNAの異なる株の花粉を貰って種子ができる、その種子は一粒ずつ性質が異なる、その結果は環境変異が生じても生き残れる可能性が高くなる、
それが進化です。オリヅルスミレにその原理をはめると辺野喜川にダムができ2株以外は全滅した歴史、小さなスミレですが悩みをもちながら生きています。
Viola stoloniflora was an endemic plant in the bank along Benoki River in the northern part of Okinawa. This species was found to be extinct in 1988 because of the dam construction. Only two plants survived and now they are propagated by stolon and tissue culture. Stoloniferous Viola is unusual in Japan but V.hederaceae native to Australia and V.pilosa native to Southeast Asia are well known.